住井担当の授業一般に関するQ&A (2013年1月更新)

はじめに

Q
この文書は何ですか?
A
私(や他の先生)が担当する授業に関して、実際にあった質問や意見一般にQ&A形式で答える文書です。
Q
どの授業が対象ですか?
A
私が担当するすべての授業が対象です。(特定の授業にしか関係がない質問は、ここでは扱いません。)
Q
どうしてこのような文書を公開するのですか?
A
私の授業の方針を、より良く理解してもらうためです。
Q
本当にこんな質問が多いのですか?
A
どれも実際にあった質問や意見(の要約)ですが、必ずしも「多い」わけではありません。「そんなことは言われなくてもわかっている」という人も多いと思います。

一般に、学生は真剣に学習に取り組んでいます。しかし、大学(やそれ以前の学校)の説明不足で「勘違い」をしている場合があるように感じたので、説明する次第です。

レポートの剽窃

Q
レポートを提出したら、「剽窃である」と指摘されました。剽窃とは何ですか?
A
剽窃(ひょうせつ)とは、他人の著作物(計算機プログラムを含む)やその一部を、引用であることを明示せずに、自分の著作部やその一部として用いることです。「他人の著作物」としては、友人の書いたレポートや、インターネット上の文章・プログラムなどが含まれます。
Q
剽窃を理由に、レポートの評価を不可にされたり、ペナルティを受けたりしました。どうしてですか?
A
一般に学業において、剽窃は重大な不正行為だからです。試験のカンニング(cheating)と同様です。
Q
どうして他人の文章やプログラムを参考にすることが不正行為なのですか?
A
「参考」と「剽窃」はまったく異なります。両者の違いは、「自分で理解した上で、自分の言葉で書き直したかどうか」です。
Q
自分の言葉で書き直したのに、「参考文献を明記せよ」と指摘されました。どうしてですか?
A
(本当に)自分の言葉で書き直せば、剽窃ではありません。それでも、参考文献があれば明記する必要はあります。一般に学業において、他人の仕事に正当な評価を与えることは、必要最低限のルール(の一つ)だからです。
Q
参考文献を明記したのに、剽窃と指摘されました。どうしてですか?
A
参考文献を明記しても、自分の言葉で書き直さず、引用であることも明示しないで写したら剽窃になります。
Q
ちょっとしか写していないのに剽窃と指摘されました。どうしてですか?
A
たとえちょっとであっても、剽窃は剽窃であり、不正行為です。
Q
少し変えて写したのに剽窃と指摘されました。どうしてですか?
A
たとえ少し変えても、剽窃は剽窃であり、不正行為です。
Q
私は友人が読み上げてくれた文章を書き直したので、写してはいません。
A
計算機上でファイルやテキストの全体または一部をコピーした場合や、画面や紙を目で見て写した場合はもちろんですが、口頭で聞いた文章を少しだけ変えて(あるいはまったく変えずに)提出した場合も、当然ながら剽窃になります。
Q
どうしてそんなに厳しいのですか?
A
これが「厳しい」とは言えません。一般に学業において、他人の仕事を自分のものと偽ることは不正行為だからです(欧米の大学では退学や除籍もあり得る「常識」です)。学業に限らず、一般社会でも同様です。
Q
私のレポートは剽窃ですか?
A
上述の問題にあてはまらなければ剽窃ではありませんので、過剰な心配は不要です(通常は「剽窃」と「偶然の一致」の違いは明らかです)。剽窃(の疑い)があれば必ず本人に確認・通知しますので、万が一にも身に覚えがないときは申し出てください(これまで「濡れ衣」だった例はありません)。

レポートの評価

Q
レポートは誰が評価しているのですか?
A
私が自分で評価する場合と、助教の先生やTA (teaching assistant)の大学院生が評価する場合があります。後者の場合も最終責任は私にあります。
Q
レポートを提出したら、コメントを返信されました。再提出の必要はありますか?
A
「再提出してください」と返信に書かれていたり、(全体または個別に)口頭で言われたりしなければ、再提出する必要はありません。
Q
レポートを提出したら、コメントを返信されました。評価に影響しますか?
A
コメントの内容により、影響する場合と、しない場合があります。できるだけ返信や授業の中で述べるようにしていますが、わからなくて知りたい場合は聞いてください。
Q
レポートを提出したら、「用語や論理が正しくない」というようなコメントをされました。内容が正しければ良いのではないですか?
A
用語や論理が正しくなければ、「内容が正しい」とは言えません。
Q
レポートを提出したら、「文章の意味が明確でない」というようなコメントをされました。内容が正しければ良いのではないですか?
A
文章の意味が明確でなければ、「内容が正しい」とは言えません。
Q
でも、私はちゃんとわかっていたので、良いのではないですか?
A
私は超能力者ではないので、用語や論理が正しく文章の意味が明確でなければ、本当に「ちゃんとわかっていた」かどうかわかりません。むしろ、用語や論理が誤っていたり、文章の意味が明確でなかったりする場合は、実際に確認するとほぼすべて、「わかっているつもりだったけど、本当はわかっていなかった」ケースです。
Q
どうしてそんなに厳しいのですか?
A
これが「厳しい」とは言えません。上の繰り返しになりますが、「うまく説明できない」ときは「自分がわかっていない」場合がほとんどだからです。

また、自分の考えを他人がわかるように説明する力は、学業はもちろん、一般社会でも必要です。私の授業のレポートは、時間的(&体力的?)限界もあり、「大きな」誤りがある場合や、「本当に」意味が不明な場合しか指摘していませんが、現実社会の文書はもっと厳しく評価されます。(例えば自分が企業に就職して、上司や顧客に出す企画書や報告書を書くときを想像してみてください。)

Q
多くの内容を書いて問題を指摘されたレポートと、ろくに内容を書かず何もコメントされなかったレポートを比べると、前者が後者より低く評価されるのは不当ではないですか?
A
そのようなことがないように注意して基準を定義し評価しています。もし採点ミスだと思う場合は、是非とも申し出てください。本当に採点ミスであれば(当然ながら)訂正しますし、採点ミスでなければ説明します。
Q
私は長いレポートを書いたら誤りを指摘されたのに、友人の短いレポートは何も言われませんでした。
A
「長さ」の問題ではなく、「重要なポイントを正しく説明できているかどうか」を基準に評価しています。極端に言うと、本当にポイントがきちんと書かれていれば1行でも構いませんし、そうでなければ何百行だろうと駄目です。何が重要なポイントかは出題や解説のときに述べていますが、聞いていなかった場合や、聞いてもわからなかった場合は是非とも質問してください。
Q
レポートを提出したら誤りを指摘されました。間違えてしまい、申し訳ありませんでした。
A
レポートは授業の一環ですから、自分なりにきちんと努力した上であれば、間違えても謝る必要はありません。同じ誤りを繰り返さないよう、指摘を読んでよく考え、自分の理解を修正することが重要です。

授業の方法

Q
授業が難しすぎるので、もっと易しくするべきだと思います。
A
学部(大学院ではないほう)の私の授業が「難しい」とは思いません。むしろ、その分野の技術者・研究者に期待される、必要最低限の初歩的内容が中心です。さらに易しくしたら(学生にとっても私にとっても)楽かもしれませんが、後で苦労します。

もちろん、同じ内容であれば(私の時間と体力の許す限り)できるだけわかりやすく説明するよう、最大限努力しています。わからないときは遠慮せず、是非とも口頭やメールで質問してください。

Q
曖昧な説明が多くてよくわかりません。
A
私の授業では、形式的な定義・定理・証明と、その背後にある非形式的な「直観」の両方を説明しています。「直観」が欠けていると、授業で習ったことを自分で「発展」させ、大学・大学院や企業での研究・開発に「応用」することができないからです。もちろん、形式的な定義・定理・証明も(非形式的な直観とは区別して)授業中に説明していますが、聞いていなかったり、聞いていてもわからなければ是非とも質問してください。
Q
「質問してください」と言われても怖くて質問できません。
A
私の授業では、どんな初歩的質問でも、質問したせいで成績が下がったり不利な扱いを受けたりすることは絶対にあり得ません。むしろ、わからないのに質問しないほうが問題です。

他の人の迷惑になると思うかもしれませんが、自分がわからないときは、他にもわからない人がいることが多いので、質問してくれたほうが私も他の人も助かります。もちろん、授業中ではなく授業後や授業前に個人的に質問してもまったく構いません。

それでも怖いというのであれば私の人徳の問題ですので、いずれにせよ遠慮する必要はありません。(でも、本当にがそんなに怖いでしょうか?)

Q
板書を完璧に丸写ししたにも関わらず、美しいノートになりません。
A
板書はあくまで授業の内容を説明するために書くものであって、美しいノートを作るためではありません。ただ椅子に座って授業を聞くだけでなく、「自分の手を動かす」ために、板書を写すことも必要ですが、それだけでは十分ではありません。授業の内容を「自分の頭で考えて理解する」ことが最も重要です。
Q
期末試験の問題が、授業中に配布された演習問題や過去問と違うので、解き方を習っていません。
A
大学の授業は、小学校や中学校(高校や塾・予備校も?)と異なり、習った問題と同じ問題が解ければ良い、というものではありません。授業の内容を理解した上で、自分で考えれば正答できる問題を出しています。(過去問は配布する授業と、配布しない授業があります。)

おわりに

Q
間違いや剽窃を指摘されると学習意欲を失うので、良くない授業だと思います。
A
私の授業のレポート等で間違いを指摘された人が、インターネット等で不満を述べるケースが散見されます。これまで私が見た限り、それらは誤った答を正しいと思い込んでいたり、説明を聞いていなかったり等の勘違いによるものです(したがって、それらに含まれる「後輩へのアドバイス」等も正しくありません)。もし間違いを指摘され、その指摘がよくわからなければ、メールや口頭で必ず質問してください

一般に、間違いを指摘することと、その人の人格を否定することはまったく異なります。むしろ、間違いを指摘され、その指摘が正しければ、それを認めて自分の理解を修正することが学習の本質(の一つ)です。

大事なことなので繰り返しますが、「間違いの指摘」は「人格の否定」ではなく、「学習の本質」の一つです。慣れないと反感を覚えるかもしれませんが、そういうものではありませんので、是非ともポジティブに捉え、学習に有効活用してください。

なお、剽窃は単なる「間違い」とはまったく異なる不正行為です。

Q
とにかくうざい。
A
そういう性格なので気にするな。