(2009/11/20) 12番「競争的資金(先端研究)」および13番「競争的資金(若手研究育成)」 に関する意見 (※公開にあたり一部情報等を編集しました) 中川正春先生御侍史・後藤斎先生御侍史 前略 東北大学大学院(情報科学研究科)准教授の住井英二郎と申します。こ の度は意見提出の機会を賜り、誠に有難うございます。以下の通りご送付申し 上げます。取り急ぎ用件のみ大変失礼いたしますが、今後とも両先生のご活躍 を心よりお祈り申し上げます。草々 -- 東北大学大学院情報科学研究科 准教授 住井英二郎 http://www.kb.ecei.tohoku.ac.jp/~sumii/ 〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-3-09 Tel/Fax: 022-795-**** E-Mail: sumii@ecei.******.ac.jp ====================================================================== 事業番号12 事業名「競争的資金(先端研究)」 ※「国立大学法人運営費交付金」の独立した項目が見当たりませんでしたので、 「競争的資金(先端研究)」と共に述べます。 意見: 年度会計を廃し、「繰り越し」を「例外」ではなく「基本」として推奨・評価 すれば、一件あたりの金額は削減できるので、件数を大幅に増加すべき。 理由: 昨今の経済状況において、(より直接的な福祉・医療等を優先するために)様々 な基礎研究費の必要性を再検討することは当然です。しかし、科学研究費補助 金(特に「基盤研究」)と国立大学法人運営費交付金は、ありとあらゆる研究 費の中でも最も基本的なものであり、まさに「王道」です。これらを「縮減」 して日本の科学技術ひいては国家の未来はありません。 基礎研究は、通常の事業とは大きく異なり、何十年〜何千年もかかるものです が、その成果は巨大です(経済効果の計算すら困難ですが、間違いなく日本の 全国家予算を上回ります)。例えば紀元前古代ギリシャの基礎研究である「ユー クリッドの互除法」というアルゴリズムは、現代の安全なインターネット通信 に必須の技術となっています(「インターネットの経済効果」はいくらでしょ うか?)。基礎研究では、このような実例が何千・何万とあります。現代社会 において、そのような研究をサポートすることは国家にしかできません。 「競争的資金(先端研究)」の事業仕分けでは、制度の乱立が指摘されました。 その通りです。では、なぜそのような乱立が起こったのでしょうか? 運営費 交付金が毎年一律削減され、その「かわり」とされる科学研究費補助金は非常 に低確率かつ短期間しか獲得できないからです。 人間は何十年〜何千年もの未来を予測することは不可能です(ユークリッドは インターネットの出現を予言したでしょうか?)。場当たり的な「重点予算」 ではなく、「幅広く」「安定した」支援こそが本当に必要です。運営費交付金 に加え、科学研究費補助金まで削減してしまったら、日本の科学技術研究は取 り返しのつかないことになります。科学技術なくして日本ひいては人類の未来 はありません。 なお、現在の科学研究費補助金の最大の問題点は「年度会計」です。より一層 の「繰り越し」制度の拡大を強く希望します。 ====================================================================== 事業番号13 事業名「競争的資金(若手研究育成)」 意見: 「縮減」どころか「増額」すべき。 理由: 事業仕分けにおいて、「特別研究員事業は雇用対策」という批判がなされまし た。大きな誤りです。高い競争率はもちろん、そもそも「応募者」のほとんど が、すでに世界で活躍するトップレベルの若手研究者です(応募書類の論文リ ストを見てください)。彼ら・彼女らはまさに「研究するために産まれてきた」 ような人種なのです。 無論、(事業仕分けで「提案」されたように)学校教員や民間企業で活躍する こともできるでしょう。しかし、それは彼ら・彼女らにとっても、日本という 国家にとっても大きな損失です。 アメリカの主要大学(科学分野)では、日本では特別研究員事業の対象ですら ない博士前期課程在学中から、ほとんどの大学院生に特別研究員(DC)と同等の 給与が支給されています。特別研究員のこれ以上の削減は、日本という国家に とって致命的な頭脳流出につながります。それでよいのでしょうか。 ====================================================================== 以上 ---------------------------------------------------------------------- 参考: http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/sassin/1286925.htm https://form.cao.go.jp/cstp/opinion-0005.html http://en.wikipedia.org/wiki/RSA ----------------------------------------------------------------------